11話「あなたにとって――起業とは?」

11話「あなたにとって――起業とは?」

< 10話「何のための社畜なのか!?」

鈴木が企業したわけ

僕は、全国の市区町村に最新ITシステムを導入するプロジェクトを一段落つけ、次を考えはじめた……

こんなに便利なシステムは他にない、もっと多くの人に使ってほしい!

特にこれから成長するような、小さな企業にこそ使ってもらいたい、ってね

うお〜!アツイっすね!

その想いもあって、上司に提案をしたんだ

しかし!

返ってきたのは思いもよらない言葉だった……

「絶対無理だ」

「えぇ!!」

「これ以上、システムの導入費用は下げられない。我々が相手にするべきは、利益の大きい大手企業だ。この方針は変えない」

けど僕は、すかさず言い返した!

「今後の日本を担うのは、これから成長する中小企業も同じです!彼らにウチのシステムを届けた先の可能性を捨てるんですか!?」

か、カッコいい……!

でも、認めてもらえなかった……。だから、1回や2回じゃなく、何度も何度も議論した。コストを減らす方法、宣伝方法、いろんな提案をした

この技術で、世界中の人を幸せにしたい――。

「世界を、加速させる」。その一心でね

うぉ〜!

うるさっ!

どうした急に!?

お前ら知らねーのかよ!? 

「世界を、加速させる。」スズキテックの企業理念だろ!

山下くん、よく知ってるね。そう、ウチの理念は、当時の想いから来てるんだ

そうだったんですね……

くぅ〜……。シビれるぜ……(じーん)

ITで、世界を変えたい。たくさんの人を幸せにしたい

その気持ちで、上司に提案し続けた結果……

結果……?

僕は会社を辞めた!

へ〜……

って、えぇ!?

や、辞めた!?会社を!?

うん、そうだよ

そうだよって!どういうことすか!?

僕の提案は最後まで、うなずいてはもらえなかったんだ……

そう、だったんすか

そんな……

この会社じゃ、自分の思い描く世界は実現できない。そう思った僕は……

起業を?

その通り。

すごい決断……。バクチじゃないですか……

ははっ。今考えてもそう思う。バカだなって

けどそんなバカな男に、会社の同僚と後輩がついてきてくれた。その3人で会社を立ち上げることにしたんだ

うおー、こっからアツイ物語が展開していくわけっすね!

いやぁ。それが順風満帆とはいかなかった

え!?

紆余曲折の日々

会社を立ち上げた当初は大変でさ

まず、お客さんゼロの状態から仕事をとってくるのに苦労した

ツテを使って、知り合いのお客さんに会いに行った。1人で何件、何十件、何百件もまわった……

大変すぎる……

そして、資金調達にも奔走した。快諾してくれる投資家も、少しずつだが現れた!

スゴイ、着々と!

うん。当時の僕は、勢い任せだけど、熱意だけはあったからね。それが届いたのかもしれない

けれど……

いざ導入する直前で、突然の失注!しかも連続でだ!

うわわ!

断り文句はどこも同じでね……。「やっぱり立ち上げたばかりの会社はちょっとね」

キツイっすね……

どんな会社も、最初はスタートアップだったはずなのに

そして追い打ちをかけるように、投資してもらえる話も突然の白紙に!

え!?それはひどい……!

1,000万円の投資を、翌年の予算に組み込んでるのに、ね。ギリギリでやっぱりナシはキツかったな。こたえたね……

さらには、「納品したシステムがうまく動かない」というクレームの嵐。あの時は人が少なくて、てんてこまいだったなぁ……

それで対応しなきゃと、従業員を倍に増やしたんだけど

あまりにハードだったから、3ヶ月で半分辞めてしまった

ええ!?

極めつけに、会社の方向性で、創業メンバー1人とはケンカ別れした……

そうだったんですか……

波乱万丈すぎる……

まさか、そこで無常を感じて古典を……?

ハッハッハ。いやいや、そうじゃないよ

むしろ、当時は「古典なんか」って、読もうとすらしなかった

昔の本なんかより、最新の論文とかビジネス本こそ読むべきだと思ってた

そうなんですか!?

あー、俺も最初はそうでした

お前のと一緒にすんな…

あの〜……。鈴木さん、なんでそんなに頑張れたんですか?

たしかにそんな苦労してまで、なんで……


それはね……僕にはがあったからだよ

「世界を、加速させる」。すべての人に、ITで幸せになってもらいたい……

その想いだけでね

……………!

どうしたの、山下

様子がおかしいぞ

鈴木さんっ!

スズキテックは、俺に任せてくださいっ!(鈴木の手を握って)

いやお前、社員じゃねーだろ

続ケモノガタリヨアケ

苦難を乗り越えた末に、つかみ取った成功

鈴木 大陸

とまぁ……そんな風に、トラブル続きだったんだけど、ある時、転機が訪れた!

おっ!

それが、ある一通のメールだったんだ

メール?

知らない送り主からで、いつもの迷惑メールかと思ったけど、なぜかその時はじっくり目を通した

件名は……

け、件名は……?

「【依頼】テレビインタビュー取材のお願い」

テ、テレビの取材!?

まさか取材なんて、と思って何度も確かめたんだけど、間違いない

これはチャンスだ!そう確信した僕は、テレビの取材を受けた

どんな取材だったんすか!?もしかして、仕事の流儀的なヤツ!?

「あなたにとって、仕事とは……」

番組っぽくすな

今でいうと、そんな感じだったかな(笑)「これからの日本を牽引する企業特集」の取材だった

その取材のおかげで、会社の知名度はグンと上がった。問い合わせが増えて、どんどん仕事が舞い込むようになった!

従業員もどんどん増やし、100人を超えた

そしてついに、アメリカに研究所を構えることができた!

すげぇ!海外進出じゃないっすか!

そう!そうなんだ!最初の拠点は、アメリカ。

約10年の時を経て、インターン留学でお世話になったニューヨークにね!

これを皮切りに、海外拠点は、次々と増えていった

そして、苦節8年……

なんと…………!

(ゴクリ……)

上場することができたんだ!

すごい、上場まで!

めちゃくちゃ濃い8年ですね……

うん。あの時は忘れもしない……

上場セレモニーで鐘を鳴らした時の、あの喜び

今までの苦労が報われた……!

これまでの努力はムダじゃなかった……!

アレ、なんか涙出てきた……

本当に、嬉しかったねぇ

スズキテックができるまでに、こんなストーリーがあったなんて……

……ところが!

ここにも、「落とし穴」があったんだ

……

ええ!?

(つづく

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